読書 「ゲノム編集とは何か」

 最近特許の行方でニュース等でも話題になっている、ゲノム編集。なんとなくどんなことなのかは分かるのですが、もう詳しいことを知りたかったので本書を読んでみました。遺伝子学に知識がない人にもわかりやすかったです。
 
ゲノム編集では遺伝子、DNAを構成する文字列を
ピンポイントで書き換えが可能。
 
 ガイドRNAとクリスパーに存在するタンパク質Csnl結合する。
Csnlは特定の塩基配列を切断する。ガイドRNAに特定の塩基配列
を持たせればその塩基配列を切断部分に組み込むことができる。
 
 従来の遺伝子組み換えは他の生物の持つ、遺伝子を組み込んで行う。
そのため、狙った位置へ遺伝子導入行うことは困難。マウスで通用した技術が人間にも有効とは限らない。
 
 しかし、クリスパーを利用すると特定位置のDNAの切断、改変が可能汎用性も高い。
他にも個々の遺伝の影響を消去できるため、病気の原因遺伝子の特定にも利用でき、特定された遺伝子もクリスパーで、除去、改変可能。
 
倫理的な問題‐私たちは神になる準備は出来ているのか‐
 
 第4章の表題です。アルツハイマー病、癌、HIVなど難病への治療への
切り札になるゲノム編集だが、倫理的な問題も大きいという問題もあります。
 
 上記のような難病であれば問題ないと答ええる人も多いと思います。
しかし、医療以外への利用はどうなのか。(例えば、身長が高い、太りにくい、などの遺伝子編集は)そして、医療とそうでないもののを誰が区別できるのかという問題もあります。極端に太りやすい人が他の病気につながる可能性が高い場合、それが病気になるのか判断は困難です。
 
 確かに倫理的な問題は残りますが、医療への応用を考えると研究が進めばいいと思いますよね。現在は生殖細胞のゲノム編集は研究ではOK
ですが、臨床はNGとなっているようです。体細胞は両方OKなので
まずはそちらの研究が進んでいるようです。
 
 AIとビックデータの組み合わせで病気の原因遺伝子の特定が進めば、
クリスパーの利用欲求は相当高まりますよね。
 多くの病気を治療できる日が来るもの近いのではと思わせてくれる本でした。
 
 技術的な部分も読みやすくよかったです。



磁性材料の強化 

今回は磁性材料の磁性強化についてのニュースです。

概要

What:非磁性体であるスカンジウムを添加することで磁性の強化が起こる

How:スカンジウムをガドリウムに添加する。

Why:スカンジウムの3d軌道とガドリウムの5d軌道が混生することで磁性を持つ。

 

詳細

 従来、磁性を持たない物質を磁性を持つ物質に添加しても磁性が強くなることは

ありませんでした。

 

 今回、非磁性体であるスカンジウムを添加することで磁性の強化が起こることが

報告されています。

 

・スカンジウムは磁性を持たないため、磁性についての議論で話題になることがない。

 

・基本的に化合物AとBを混ぜたとき、それぞれの化合物の特性を併せ持ったものが

 得られる。

 

・しかし、スカンジウムをガドリウムに添加した際には極めて例外的なことが

 発生する。

 

・1999年にレアアース合金が大きな熱磁気量を持つことが発見され、

 この発見は、合金の挙動を計算する計算法の基礎にもなっている。

 

・レアアースに他の元素を少量添加することで電子構造を変えることができる。

 

・計算法によってスカンジウムの添加が独特な結果をもたらすと予想した。

 

・スカンジウムの3d軌道の電子の働きによって大きな磁気モーメントを得ることが

 できる。

 

・これはガドリウムの5d軌道とスカンジウムの3d軌道が混成することで

 発生する。

 

・基礎研究が実を結ぶのには多くの時間が必要である。今回の例は典型的で

 現在では、レアアースを含む物質について充分な知識を得ることで

 どのように特性をコントロールすればいいかを理解している。

 

・本会の発見は非磁性体の使用法を変え、新しい磁性材料の研究開発に

 用いることができる。

 

 20年以上にわたる長期の研究によって、従来の予想とは異なる現象が発見された

ニュースでした。

 

 磁性は原子の電子の軌道運動やスピンによって発生するのが一般的で、特にd軌道の

不対電子を多く持つと相互作用によって磁性を持ちます。

 3d軌道に一個しか電子を持たないスカンジウムは磁性を持ちませんが、混成することで磁性を強めるという面白い発見でした。

 

 

 

水素燃料電池触媒の一酸化炭素対策

 Science Newslineという英語で科学ニュースが読めるサイトを勉強のために読むようにしています。内容の要約も備忘録でブログに書こうと思います。

 

 今日は水素燃料電池に使用される、多機能触媒についてのニュースです。

 水素を酸化して水とエネルギーを得る反応は環境にやさしい発電方法として、注目されています。

 しかし、この触媒は商業用の水素ガスに不純物として含まれている一酸化炭素の影響を受けてしまいます。

 

 今回の報告では、水素と一酸化炭素、両方を酸化可能な触媒の開発に九州大学が成功したとされています。

 

・生成物として水のみが得られる水素燃料電池は理想的なエネルギーとして注目を浴び、多くの研究がなされている。

 

・水素の酸化触媒は一酸化炭素に弱く、問題となることも多い。

 

・今回、同一系内で水素と一酸化炭素の酸化を行うことのできる触媒が発見された。

 

・反応の切り替えはpHの調整によって実現可能である。

 

・酸性下では水素の酸化、塩基性下では一酸化炭素の酸化が可能である。

 

・触媒は水に可溶で、ニッケル、インジウム金属錯体でバタフライ構造を持つ。

 

・本発見で重要なことは中間生成物の単離に成功したため、酸化メカニズムを確立することができたこと。

 

・酸性下では触媒はヒドリド錯体を形成すること、塩基性下では一酸化炭素と錯体中の塩素が配位子変換し、酸性下になる際に二酸化炭素を放出することが、明らかになった。

 

・二酸化炭素をできることで、活性を失わないサイクルを確立可能である。

 

・一酸化炭素への耐性のある触媒は水素燃料電池を大きく発展させ、持続可能社会実現への解決策の一つとなる。

 

 触媒を用いる際に問題になる活性の低下ですが、その原因物質も同様の触媒で反応

し影響のない形にするとは発想がすごいですね。

 燃料電池には効率性、水素の供給などで問題はありますが、環境にやさしいエネルギーであることは間違いないので、今後も勉強していきたいです。

 

6/23 読んだニュース

 今日、気になったニュースのまとめです。

 

ニュースは怒りで拡散される

 ネットの台頭によって人々は自分にとって好ましかったり、自分と意見の合う

ニュースにしか興味を持たないようになっています。

 そのため、既存のメディアが従来持っていた世論の方向づけする能力がなくなって

いるという報告です。

 

・ニュースの重要度の決定権が記者(=記事の大きさ)から読者(=どれくらい

 シェアされたか)に移った

 

・シェアを多く獲得するには感情、特に怒りに訴えることが重要である。

 

・争いや憤りを和らげるのではなく、強めるシステムになったが、この状況も

 テクノロジーで解決できる可能性をメディアは模索している。

 

というのはまさに普段のニュースを見聞きして感じる部分ですね。

 

ネットの実名化で感情的な要因は減少するのかなと思いましたが、Facebookで

もまだまだ難しいようですね。

・農業用波長変換フィルム

 大阪府大の開発品で、太陽光の波長を変換し、光合成に必要な波長の光を増やし、

効率化させるというもの。トマトやブドウの成分の増加を確認したようです。

 均一な色付けにも効果があるようです。

 

 最適なフィルム厚、耐候性などはこれからテストしていくようです。樹全体にかぶせ

る形でもOKなら、問題なさそうですが、一つ一つかぶせるのでは手間もありそう

です。

・ケプラー、新たに219個の惑星発見

 太陽系外の惑星数がいっきに219個増えるようです。

大きさ、恒星との距離で地球に近い惑星も見つかっており、液体の水の存在可能性も

予言されています。ハビタブルゾーン(恒星からの距離がちょうどよく、液体の水が

存在できる可能性がある距離)に惑星が見つかるのはロマンがありますね。

 すべてケプラー望遠鏡によるものだそうです。天文学に極めて大きな影響を与えていますね。

 

 

 

ブログ始めました

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大学で化学を専攻し、今はメーカーで技術の仕事をしてます。
 
科学のニュースで知ったことや読んでいる本やスポーツについてアウトプットしていきたいと思ってます。
 
好きな作家は伊坂幸太郎。
スポーツはサッカー観戦が好きで、Jリーグだとマリノス、海外ではアーセナルが好きです。