磁性材料の強化 

今回は磁性材料の磁性強化についてのニュースです。

概要

What:非磁性体であるスカンジウムを添加することで磁性の強化が起こる

How:スカンジウムをガドリウムに添加する。

Why:スカンジウムの3d軌道とガドリウムの5d軌道が混生することで磁性を持つ。

 

詳細

 従来、磁性を持たない物質を磁性を持つ物質に添加しても磁性が強くなることは

ありませんでした。

 

 今回、非磁性体であるスカンジウムを添加することで磁性の強化が起こることが

報告されています。

 

・スカンジウムは磁性を持たないため、磁性についての議論で話題になることがない。

 

・基本的に化合物AとBを混ぜたとき、それぞれの化合物の特性を併せ持ったものが

 得られる。

 

・しかし、スカンジウムをガドリウムに添加した際には極めて例外的なことが

 発生する。

 

・1999年にレアアース合金が大きな熱磁気量を持つことが発見され、

 この発見は、合金の挙動を計算する計算法の基礎にもなっている。

 

・レアアースに他の元素を少量添加することで電子構造を変えることができる。

 

・計算法によってスカンジウムの添加が独特な結果をもたらすと予想した。

 

・スカンジウムの3d軌道の電子の働きによって大きな磁気モーメントを得ることが

 できる。

 

・これはガドリウムの5d軌道とスカンジウムの3d軌道が混成することで

 発生する。

 

・基礎研究が実を結ぶのには多くの時間が必要である。今回の例は典型的で

 現在では、レアアースを含む物質について充分な知識を得ることで

 どのように特性をコントロールすればいいかを理解している。

 

・本会の発見は非磁性体の使用法を変え、新しい磁性材料の研究開発に

 用いることができる。

 

 20年以上にわたる長期の研究によって、従来の予想とは異なる現象が発見された

ニュースでした。

 

 磁性は原子の電子の軌道運動やスピンによって発生するのが一般的で、特にd軌道の

不対電子を多く持つと相互作用によって磁性を持ちます。

 3d軌道に一個しか電子を持たないスカンジウムは磁性を持ちませんが、混成することで磁性を強めるという面白い発見でした。